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今日本で起きている災害とこれからの課題(その2)

【津波】
 今回の地震は東北地方の太平洋沖約100kmで発生した.地震により数万平方km(ブータンの面積に匹敵する範囲)の海底が数m以上急激に変位し,その上にのる海水も急激に持ち上げられた(西側は落ち込んだ.相対的な海面の高低差は10m以上).そして,広域に盛り上がった水の塊が周囲に広がり津波が発生した(水面を手で叩いてそこから波が周囲に広がるのをイメージしてほしい).その波が幅数100km,奥行き数kmで海岸に押し寄せ,海岸では最大で20m近い波高(と言うより海水の台地)となった.4階建ての建物が水没した場所もある.北上川では河口から内陸へ50kmまで津波が遡上した.

 この地震・津波災害では死者1万1千人,行方不明者1万7千人となっているが(記事を書いている3月31日時点),その多くは津波によるものである.ある学校では全生徒の7割がいまだに行方不明になっている.そして,地震発生から半月たった今でも,地震・津波によって17万人が避難生活を送っている(ブータンの人口に換算するとその1/4).政府が認識しえない個人による避難者数はこれに含まれない.また,地震による地殻変動で海岸近くの低地が1m近く沈降し,海底に沈んだ場所も多い.今回の津波は地図を書き変えるほどのカタストロフィックな自然現象だったのだ.

 被災地である東北の太平洋岸では,津波は過去にも経験していた.そして,高さ10mの防潮堤の建設,自治体によるハザードマップを用いた災害教育や避難訓練が行われていた.しかし,それら対策や訓練の基礎となった津波の到達予想高さよりも,今回の津波の方がより高く広範囲であった.そして,数十年前に津波を経験した時よりも,海岸部の町は大きく,複雑に発達していた.この二つが津波の被害を異常に大きくした原因である.
一方で,東北地方太平洋岸でつい最近行われた地道な地質学的研究(津波堆積物の調査)は,今回の様な巨大な津波は800年前にも起きており,そのさらに前にも1000年ほどの周期をもって発生していたことを明らかにしていた.今回の地震発生よりも前に,この研究結果が確固たるものとなり,社会に広く周知され,その対策が進んでいれば被害は小さくなっていたかもしれない.

【原発事故】
 津波は海岸にある原発も飲み込んだ.地震の揺れを感知した福島第一,第二原発では,稼働中の原子炉は緊急停止をしたが,その後必要とされる炉心を冷やすステップが地震による停電と津波による非常用電源の水没により正常に行われなくなった.コントロールが効かない状況が続き,原子炉建屋の水素爆発と放射性物質の放出・漏出が発生し,周囲では大気や水から異常な放射線量が測定されている.この福島原発の事故は史上最悪のチェルノブイリ原発事故(1986年)に次ぐ過酷事故となっている.

 これにより原発から周囲20kmは立ち入り禁止となり,そこに住む住民は強制退避,30kmまでの住民は自主避難することになった.避難者数は政府でさえ把握不能であるが,およそ10~20万人(一部津波の項の数字と重複あり)が避難生活を送っている.そしてその中には,津波に家族がのまれ,その場所が原発事故による立ち入り禁止区域ということで,捜索さえできない避難者もいる(信じられないことに!).また,原発周辺では大気,水,土壌汚染が発生し野菜や原乳の出荷が禁止,この春以降の作付け禁止となっている.また放射線は家庭の飲料水にも広く影響し,東京でも水道水の飲用が一時禁止された(日本では通常は水道水はそのまま飲用ができる).農水産物や地域住民への風評被害や被ばく地域住民の将来の免疫学的影響,および経済的損失(農水産,観光,運輸等)は今後数十年,余談を許さない状況となっている.

 なお事故の原因となった津波の危険性や緊急時電源の必要性については,前述の地質学的研究を根拠として外部有識者から既に電力会社へ指摘がされていた.それにも拘わらずその備えは不十分であった.したがって,地震・津波は自然災害であるが,この原発事故自体は間違いなく人為災害である(原発関連企業は今回の事故が想定外の自然災害によって引き起こされたとしている).

(その3へ続く)
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tag : 地震 津波 日本 現状 紹介 ブータン 寄稿 原発事故

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その2について

その2

津波>
南三陸町では16mという調査が出ている
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110327/k10014923431000.html

10mの防潮堤>
あくまで一部であり、全てではない。誤解を生じる可能性があるので、その辺りはきちんと。
津波襲来までの時間が短かったことも被害を大きくしていること、過去の地震からの経験で「津波は1時間来ない」という油断もあったと、地元の婆様達が「油断してた」とも言っていた。震源域が近かったのとこうした油断で避難が遅れた可能性もある。

原発事故立ち入り区域の被災者捜索>
津波被害による遺体の収容を試みたが、遺体の被曝量が大きく、収容困難となった事実もある(今日になって十分に除洗すれば収容可能との見解が政府から出された模様)。

東京での水道水飲用禁止>
乳幼児限定の措置。全員ではない。ヨウ素が蓄積しやすい子供への対応。

農水産物等の経済的損失>
海外への輸出が困難になった。海外で受け入れてもらえなくなった。

No title

ばいざーサマ

10m堤防,そっか.たしかに,ずーっと張り巡らされてたと勘違いされるわ.堤防,とだけしました.
 襲来までの時間と地元の油断もあったんですね.これも加味しました.

被災者捜索,言葉もないっすね.いずれにしても家族は入れないんですよね..除染すれば云々まで厳しい内容,書けない.

水道水の部分,農水産物の部分,いずれも工夫しまーす.
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jirok

Author:jirok
ブータン地質鉱山局に身をおく一地球人の独り言と備忘録.

 ヒマラヤの氷河・氷河湖問題,山地・気象災害とかってどうなのか.この地が,この社会がなぜできたのか,ブータンは,日本は幸せなのか,我が子はどう育つのか,興味の相手はつきません.

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